漫画好きのひとり言

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片喰と黄金 (北野詠一) 19話

オハイオに向かって歩き続ける二人。
沈黙も嫌なので、何か話そうとするが、
何故かアメリアは戻りましょうとだけは言えなかった。
 
喋っていると気が紛れる。
黙っていると疲れと痛みのことばかり考えてしまう。
 
そう言われてロスも納得した。
色んな話をするアメリアに、つい乗ってしまうロス。
いつしかロスは自分の事を話し始めた。
 
奴隷として無理矢理働かされ、
黒人同士でも少しでも良い境遇になりたいと足を引っ張り合う。
好きな事ややりたい事を持てない。
目の前の今日を如何にやり過ごすか。
 
そんなロスの話を聞いて怒り出すアメリア。
あまりに酷すぎるのだ。
「おぞましい」
ロスは、アメリアの言葉を聞いて気付いた。
ああ、そうだよなぁ・・・
 
その頃、モラレス邸では混乱が続いていた。
黒人達に動揺が広がり、モラレスも反省していた。
「ロスともっと話をしておけば良かったかなぁ」
 
モラレスが奴隷に優しいのは、
本当は優しい父親が、奴隷に厳しく管理することに心を痛め、
その心労で死んでしまったから。
自分は皆が穏やかに居られる場所を作ろうと。
 
周りの白人からは白い目で見られ、経営は苦しくなっていった。
しかし長年勤めてくれた奴隷が病で亡くなるとき、
「こんなにも満ち足りて家族や仲間に囲まれて死ねるなんて
ここは楽園です」と言ってくれた。
 
自分は間違っていなかった。
それからは必死で頑張った。
そして経営も安定してきて、今に至ったようだ。
 
ここでテッドは疑問をぶつけた。
「あんたの死後はどうなるんだ?」
 
奴隷は財産。
子供が相続しなければ売りに出されてしまう。
 
話を聞いていた黒人は気が気ではなくなっていましたね。
売りに出されたら、ここより良い所なんて無いので・・・
 
だからモラレスは遺言書に記すという。
「自分の死後は奴隷達を自由にする」と。
 
自由黒人になっても差別や苦労は残るらしいが、
話を聞いていた奴隷は「自由」という言葉に反応した。
 
旦那様が死ねば自由になれるの?
ケーキを切っていたナイフを手にして、こう訊く。
これは危険だ。
 
どんなに良い待遇でも、これは自分が希望したモノではない。
ここには自由がない。
誰だって本当は自由を望んでいる。
 
それはロスの行動でもあった。
鞭から逃げたのではなく、奴隷制から自由になりたかったのだ。
 
アメリアも、それを感じていたから、戻りましょうと言えなかった。
心を誤魔化して満足したフリ
そうして生きていくなんて 私も選べなかった人間ですから
命をなくすか 心をなくすか
 
そしてモラレス邸では、暴動が起きる寸前。
いくらアンナでも、これは人数が多すぎる。
 
そんな時に、訪問者があった。
とても綺麗で妖精のような・・・
 
これで皆、冷静になれましたね。
モラレスに襲いかかった黒人も、
自分がしようとしていた事に恐怖していた。
 
そして、その男はこう言った
ず~っと 扉 叩いていたんだけど!?
夜中に着いちゃったのはこっちだけどさあ
出迎えくらいあってもいいと思うぜ!?
昼間ずっと雨で寒かったの!
着替え!
コーヒー!
 
アメリアから言われた言葉を思い出したテッド達。
そして口を開いて「全然妖精じゃあない・・・」までが一括り。
 
間違いない。
こいつがイザヤだ。
 
まあでもイザヤのおかげで、危険を回避できたのですから、
ここは取りあえず感謝しておきますか。
(調子に乗るので心の中で)