漫画好きのひとり言

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もののがたり(オニグンソウ) 七十二話

ぼたんを守れなかった。
婚礼調度達の落ち込みぶりは酷かった。
見舞った者達が凹みすぎていて声を掛けられないほど。
 
それでも兵馬だけは違った。
しっかり前を見ているのだ。
 
例の告白で雑念まみれかもだけど・・・
 
婚礼調度達は、あの場に居合わせなかったので、
何のことか分からなかった。
それはぼたんが兵馬に想いを告げたこと
 
それを聞いた時に、婚礼調度達は驚き、そして喜んでいた。
あのぼたんが誰かに想いを寄せるようになったのだ。
 
兵馬と出会う前のぼたんは、笑顔こそ作るものの、
その笑顔は周りの人と波風を立てない為のものであり、
心底笑う笑顔とは違うものだった。
 
それも無理はない。
幼い頃に大切な人を失い、心が壊れていたのだ。
 
「あれは七歳そこらの子供の目やない
黒いモンがあるよ あの子の中には」
 
それから婚礼調度達の努力もあって笑顔は作れるようになったが、
人に想いを寄せる事は出来なかった。
 
想いを寄せても別れが辛くなるだけだし
別れなんて唐突に訪れるし
その時は消えちゃいたくなるくらいで・・・
あんな思いは ・・・嫌だ
 
まだぼたんは変われないのか?
そんな事はなかった。
それは婚礼調度達の存在だ。
 
婚礼調度達の事は好きだという。
その好きという気持ちを知って、人に向けられる笑顔があるなら
いつかぼたんは誰かを好きに、誰かはぼたんの笑顔を好きになる
 
その「いつか」は間もなくやって来た。
兵馬との出会いだ。
 
そしてぼたんは化け物に攫われるような時に、
周りが恥ずかしくなるような告白をしたのだ。
 
婚礼調度達のおかげで、立派な子に育った。
これを聞いて、彼らが動かないわけがない。
兵馬の元に向かう婚礼調度達。
 
告白を受けて、兵馬はどうするのか?
 
いくら疎い自分でも、あの告白の意味することは分かっている
返事をするのが礼儀という事も理解している
 
あまりに淡々と語る兵馬に拍子抜けをする婚礼調度達。
兵馬は続ける。
 
あんなにも真っ直ぐな想いをぶつけられたのだ
受けたこちらの腹も据わるさ
・・・だから力を貸してくれ 婚礼調度
 
直接 返事を伝える為にも
俺はぼたんの元に辿り着かなくてはならない
お前達の力が必要だ
 
この言葉に、婚礼調度達が力を得ないわけがない。
 
ぼたんの為、そして兵馬を導く為の付喪神となりましょう!!
恋路を邪魔する不届き者は皆 踏み潰す
たとえ あなたが倒れようとも 首の根掴み引き摺って行きます!
 
ぼたんを救出するため、皆の心が一つになった。
さあ、前を向け!