漫画好きのひとり言

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電波的な彼女 (原作/片山憲太郎 漫画/平岡滉史) 最終話

(コンテ構成/降矢大輔 キャラクター原案/山本ヤマト
ジュウは一人で帰ったと言われ、追い返された雨だったが、
恋が成就したのに一緒に下校しなかった事に違和感があった。
 
それに賀来羅に共犯がいるという疑念も晴れなかった。
ジュウに電話で犯行現場を知らせた人物の存在、
賀来羅はカメラを持たないのにネットに画像がアップされた点。
それらから共犯者の存在に確信を深めていたのだ。
 
まあ、まさか共犯者が彼女だとは思わなかったようだが。
 
邪魔をされて怒る彼女に、ジュウ様の騎士だから助けたと言う雨。
電波入っているというか狂っていると言われるが、
それなら同じようなモノ。
(いやまあ、人殺しと比べるのもなんだけど)
 
あなたが何を考え、何に苦しみ、何を求めて
こういった行動に出たのか 興味がないわけではありませんが・・・
ジュウ様の身の安全とは比べられません
紗月美夜 あなたを排除します
 
これに対し、「排除されるのは・・・・あんたの方だよ!!」と、
カッターナイフを振り回してきた美夜。
 
しかし美夜はカッターナイフで人を殺した事が無いので、
使い方が素人だった。
 
雨は鮮やかに躱してスタンガンを使用、
美夜はショックから意識を失って倒れる。
 
雨はジュウの手を取って立ち上がらせるが、
その隙を美夜が突いてきた。
雨を背後からカッターナイフで突き刺そうとしたのをジュウが気付き、
雨を庇ってジュウが刺されてしまう。
 
少しは気が済んだか・・・?
バカ野郎
 
自分のしでかした事に気付き、狼狽える美夜。
違う 違うの・・・
ジュウ君違うんだよ これは 信じて!
こんなの違う!! わたし本当は・・・
 
ここで雨がスタンガンでもう一度美夜を黙らせる。
二度目は最大出力だったのかな。
さすがに美夜も起き上がってこないようだ。
 
雨を庇って深手を負ったジュウ。
かなりの出血に、いつもは冷静な雨も狼狽えていた。
 
死んではダメです!
せっかく会えたのに
せっかくこれからも一緒にいられるのに
死んでは・・・ 死んでは嫌です
 
ジュウ様!!
大粒の涙を流して叫ぶ雨は美しくもあった。
 
生死を彷徨うジュウ。
夢を見ていた。
それは小学四年生の頃のことだ。
 
いつものように虐められていた
誰にも助けてもらえず逃げ出して
いつものように一人で泣いていた
 
気が付くと公園のベンチに
一人で泣いている小さな女の子がいた
 
自分は誰かに優しくされたかった
でも自分より悲しそうに泣いている子を見たら
その子に優しくしてあげたくなった
 
理由はわからない
理由なんて きっとない
 
頭を撫でると、女の子は驚いた顔を見せたが、
微笑みかけて、その子の涙が乾くまではと色んな事を話した。
 
当時流行っていたアニメや漫画、
それから学校にも少しはある楽しい事
 
ずっと昔のことだ
他愛も無い 目を覚ませば忘れてしまうだろう
そんな夢を見た
 
目を覚ますとジュウは病院のベッドの上。
そして目の前には母(紅香)がいた。
 
そして怒られた。
親より先に死ぬんじゃないよ
産んだ私がバカみたいだろ
 
おまえがどんなクソガキだろうと
おまえはわたしの唯一の息子で 代わりは存在しない
ただ一人の柔沢ジュウだ
そのことを忘れるな わたしは忘れない
 
紅香も不器用なりに息子を愛しているのだ。
ジュウもその事に気付いたでしょう。
 
そして美夜や雨の事を教えて貰った。
最初、美夜は死んだと言うので驚いたが、悪い冗談だった。
あの後、自首したようだ。
 
雨はジュウの側を片時も離れないので、
睡眠薬入りのコーヒーでやっと眠って貰ったらしい。
 
そして雨が応急処置をしていなければ、
ジュウは死んでいたようだ。
これは礼を言わないといけない。
 
生死を彷徨った時に、あの世の入口くらいは見えたか?
紅香に聞かれたが、「何も見えなかった」と言うと、
「つまらん、まだ生きろということだな」と言う。
 
まだ苦しめってことだろ
 
生きる事が苦しいか?
まだまだ青いな
おまえは何も分かっちゃいない
 
美夜は自分が賀来羅に襲われた時、泣き叫んで助けを請うた。
 
賀来羅の顔が鬼のように怖くて目を逸らすと大きな鏡があった
そこには自分ではないみたいな醜い顔が映っていた
 
被害者の人達も死ぬ間際にそんな顔をしていた 最悪の顔
自分が「される側」から「する側」になれば、何か変われるような気がした
そうに違いないって そう思って 思って・・・
 
家にいる時の美夜は学校とは真逆の無口で内向的な少女だったらしい
 
新学期
クラスの雰囲気は変わった
美夜と仲良かった奴らは早く美夜を忘れようとしたのか
バカみたいに明るく振る舞っていた
美夜に好意を寄せていた男子も興醒めしたとばかりに話題を避けた。
 
救いの手はあったはずだと あの時 ジュウは言った。
しかし上辺だけの付き合いだったクラスメイトが美夜を救えたとは・・・
 
変わらないのは雨くらい。
今も一緒にいてくれる。
 
未だに雨が自分にとって どういう存在なのか分からない
でもよくわからないのが堕花雨という少女かもしれない
 
雨の日は好きか?と聞くと自分の名前のようで昔は好きだった。
でも今は持って行きようのない高揚感はただ消えるのみだと分かり、
少し泣きたくなった。
今でも雨の日は複雑な気持ち。と言う。
 
ジュウはそんな雨の頭の上に手を乗せ、率直な気持ちを伝える。
俺に野望などない 夢も大志もない ただそれなりに生きていけばいい
それが柔沢ジュウだ
俺は多分これから先しょぼい人生を送るだろう
ちっちゃい幸せにこだわって大きなチャンスを逃すかもしれない
だから俺について来ても良い事はない
どうだ?愛想は尽きたか?
 
それでも雨は「いいえ」と言う。
一緒にいて何が楽しい?と訊くと「いろいろと」と笑顔で言う。
 
それなら飽きるまでいればいい
俺も飽きるまで付き合ってやる
 
渋谷にある漫画専門の古本屋に行きたいなら
今日は暇だし付き合うぞ
 
雨の漫画好きは、あの時から始まったのでしょうね。
きっとこの二人が飽きる日は来ない。
この絆は前世からあったと言ってもおかしくないくらい、
離れる事はないでしょう。
 
連載お疲れ様でした!
なかなかヘビーな内容でしたが、
最後は良い感じに締めてくれてホッとしています。
平岡先生の次回作を楽しみにしています。