漫画好きのひとり言

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片喰と黄金 (北野詠一) 手引

カイルという少年がいた。
孤児であったが、養子となった家はそれなりの待遇で迎えてくれた。
 
失敗しなければ食事もくれる。
屋根の下で眠らせてくれる。
これが普通なのだと思った。
 
しかし11歳の時に、この生活は終わった。
家計が苦しくなり、何度も話に聞いた「まともではない家」に
売られる事になった。
 
そこは従僕の家系。
主従関係の続く二つの家。
主のオニール家にはアメリアお嬢様が、
従のボウエン家には一つ上のコナーがいた。
 
アメリアには初対面でいきなり遊びに連れて行かれた。
本当にまともではない家だ。
 
二年後にはすっかり馴染んだ。
カイルは求められる言葉が、好かれる振る舞いが分かった。
おかげで安心・平和に暮らしていけた。
 
でもその生活もジャガイモの疫病の流行で終わる。
不作が続き、優しかった養父は風邪をこじらせ亡くなる。
アメリアの身長は変わらないまま。
栄養不足が深刻だった。
 
自分も空腹だった。
無事なジャガイモを見つけた時、思わず食べてしまった。
こんな事をすれば怒られるのが普通なのに、
アメリアとコナーも食べて、一緒に叱られようと言う。
 
この人達は俺(カイル)を捨てない
何があっても
 
それを恐ろしいと思い、アメリアを突き放し、
その場を離れていった。
 
1年後
日雇いで食い繋いでいたが、
金目当ての強盗に襲われた。
 
強盗は襲いながら「家族のため」と言っていた。
この男には、どんな事があっても守りたいモノがあるんだ。
 
自分にはあるのか?
アメリア達が浮かんだ。
 
自分にもいる
あの時、何が恐ろしかったのか
 
アメリアは何があっても俺を捨てない
最後まで分かち合い続けるんだ
まともじゃない
 
まともじゃない程の愛を
受け止めるのが恐ろしかった
 
自信がない
そんな価値のある人間じゃないんだ
やめてくれ
俺なんかのために
 
やっと気付いた。
俺は皆が大好きなんだ
 
帰って謝ろう
たくさん叱って貰って
いつものように笑い飛ばしてもらうんだ
 
オニール家に戻った。
しかしそこにはコナーとアメリアしかいなかった。
他の皆は死んでしまったのだ。
しかもアメリアも数日前に倒れて意識がない状態だった。
 
無敵だと思っていたお嬢様は痩せた小さな子供だった
どんなときでも強い主人で居てくれた俺なんかのために
それなのに俺は・・・
 
アメリアの横に行き、謝るしかなかった。
そうしたら、意識がなかったはずなのにアメリアは頭を撫でて
「大丈夫ですよ」と言ってくれた。
こんな主人は救わなくてはいけない。
 
大富豪になりたいと言うあなたの描く夢が実現すれば良いなぁ
 
日雇いの時に得た情報をコナーに伝える。
カリフォルニアという所で黄金の山が出たと。
 
大富豪になれるぜ
俺が糧になる
だから俺もカリフォルニアに連れて行ってね
 
カイルは尖った木の枝を持ち、
それを自分の喉元に当てる。
 
神様に背いても
俺のせいで生きて
献身なんかじゃない
これは何て呼ぶのかな
これは・・・
 
わがまま!!
アメリアはイザヤに怒りながら語る。
 
寝ている時にスープを飲ませたイザヤに、
これからは寝ている時にスープを飲ませないで欲しい
その理由を語ったのだ。
 
トラウマレベルだなぁ。
そういうわけでカイルが初めて言ったわがままです
聞いてあげたいでしょう
 
苦労してもカイルのせいにはしない
彼は共犯
ただの大切な家族だから
 
ちなみに次号休載