漫画好きのひとり言

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時給三百円の死神 (作画/桐原いづみ 原作/藤まる) 9話

死神には二種類いる。
半年限定のアルバイト
死者でありながら死神になる無期限タイプ
 
長く死者をやっていると、死神になって他の死者と触れ合い
自分を見つめ直さないかと、お誘いが来る事がある。
 
それに応じれば死者の面倒を見る側になる。
そして死者の死神を中心にアルバイトを育てていくことで
死神の仕事は回っていく。
 
真司は信じがたかったでしょうけど、
言われて腑に落ちる事もあった。
 
死神の雇用期間は半年のはずなのに
真司と雪希では知識量に差がありすぎた。
そしていつも雪希が先に死者に会っていた。
 
自分が死者であることを真司に内緒にしてもらうために、
先に会って根回ししていたのだ。
 
雪希も誤魔化しきれないと思ったのでしょうね。
死者の中には時間を止める力を持つ者がいると言ったが、
それは自分の事だと。
 
そう打ち明けて、真司の前から消えた雪希。
時間を止めて自宅に帰ったのだ。
そして真司の手には1万円札。
バイト代のつもりか?
 
雪希が逃げた。
説明も弁解もないまま。
ただ逃げた。
 
死者であると 何故 教えてくれなかったのか
似た者同士で支え合える関係だと思っていたのは
真司の方だけだったのか。
 
憤りと絶望 苦しみと悲しみがごちゃまぜに頭を蝕んだ。
ともかく会って話せたら・・・
 
しかし雪希は、あれから学校を休んでいた。
二週間も会えないまま。
クラスでも話題になっていたし、担任も心配していた。
 
それなら様子を見てくるので住所を教えて欲しいと言うと、
担任は喜んで教えてくれた。
 
自宅まで行ったが、会ってはくれなかった。
手には一万円札が握られていたので、
雪希は時間を止めて会ってくれていたのだろう。
彼女はどんな思いで自分にお金を握らせたのだろう・・・
 
真司には分からなかった。
このまま雪希が死んだ理由も分からず
助けることも 支えることも
未練や苦しみを聞いてやることもできず
ただ無駄に時間を使って
俺がこのまま全て忘れることを雪希は望むというのか
 
何度自宅に行って呼び鈴を押しても雪希は出てこなかった。
それから1ヶ月が過ぎた。
 
睡眠中に口が渇き、水を飲もうと台所に行くと父親がいた。
久し振りに会話をした気がした。
 
真司は怪我をした時も母親が出ていった時も
父親に心配掛けさせまいと気丈に振る舞っていた。
だから父親もそんな真司に甘えていた。
 
でも朝月が亡くなった時、真司は荒れた。
もしかして、このまま真司までいなくなってしまうのではないかと
怖かったと父親は打ち明けてくれた。
 
父親は元政治家だった。
かつての政敵に会社の部下を侮辱され
つい手を上げてしまったことが歪曲され、
傷害事件として大きく報道された。
 
それが原因で母は出て行き、
良い仕事にも就けなくなったのでしょう。
 
暴力の事実はかばえないが、
部下のために怒った父親の行動は間違っていないと思っている。
 
そんな父親から、朝月さんにちゃんとお別れはしたのか?と訊かれた。
まだしていないと答えると、無理しなくても良いが、
ちゃんと挨拶して来た方が良いぞと言われた。
 
朝月の母親に罵倒された時の事が浮かんだ。
でも逃げてばかりでは駄目だ。
そう決心した真司は、朝月の家に行っていた。
 
ある程度の時間が経った事で、朝月の母親も落ち着いたようだ。
真司に謝り、娘(静香)に挨拶をしてあげてと言ってくれた。
 
朝月の遺影を前に、色々と話した。
死神のアルバイトを頑張っていること、
でもなかなか上手くいかないこと。
 
あの日のこともさ
後悔ばかりで思い出すと正直つらい。
なんで何も言ってくれなかったんだ。
なんでこれが最後だって教えてくれなかったんだ。
 
母親がお茶を出してくれた。
そして一緒に日記も見せてくれた。
 
真司も読んだことがあったが、
淡々と今日の出来事を書いていただけだった。
 
でも、それが変わっていったらしい。
今日あった辛いことよりも
明日起きて欲しい希望が書かれるようになっていた。
 
その中には真司とやり直したいともあったのだ。
改めて真司は朝月の日記を読んだ。
そこには自分と二人きりで、我が儘な時間を過ごしたいとあった。
 
これに真司は思い当たる事があった。
最後の日に言ってくれた言葉。
「わがままを聞いてくれてありがとう」
 
彼女の未練は妹との仲直りだった。
そしてそれを諦めたのも事実。
でも、その後 朝月は選択したのかもしれない。
 
この世を去る前に真司と二人きりの時間を過ごすことを
 
たとえその選択の結果、真司が苦しむとしても
きっと許してくれると信じて。
 
自分のささやかな夢を叶えるために
何も打ち明けず たとえ短くても
目一杯我が儘で幸せな時間を過ごそうと
そういう選択をしたんじゃないだろうか
 
朝月が死者だと知ったら、真司はそれどころではなかっただろう。
だから内緒にしていたのでしょう。
 
おかげで真司は苦しんだし悩んだが、
それでも朝月が真司と希望溢れる未来の話をすることで
自分なりに最後の精算をすることが出来たなら・・・
 
妹とは上手くやれなかったが、
それでも日記に前向きな言葉が並んだのは、
人生に希望を持ちたかったからではないだろうか。
 
そんな朝月の希望に真司はなれたのかもしれない。
 
ようやく分かった
朝月は未練を晴らせずとも
きっと満足して旅立ったんだ
 
それなら雪希にも、きっと何か出来るはず。
 
雪希のおかげで朝月の死を受け入れることが出来たのだ。
雪希との日常で救われた真司。
それなら今度は恩返しだ。
 
困っている死者がいるなら死神は救いに行くだけ
だったら今度は俺(真司)の番だ
 
何が何でも雪希に会うつもりですね。
どうやって彼女の心を開くのでしょうか。