漫画好きのひとり言

今までありがとうございました!

もののがたり(オニグンソウ) 七十八話

兵馬の前に立ちはだかったのは祖父の造兵。
互いに相手のことをよく知っているだけに、戦いは均衡状態。
 
若い兵馬の方が有利のはずなのに、
互角に戦われて兵馬は驚きを隠せない。
 
これが祖父の本気。
岐家の中でも当主として前線にいた期間は歴代最長
その看板は伊達じゃない
 
ここで造兵は「外式 開門術・真髄 生太刀“八十遣”」を使う。
それは新手だった。
兵馬は防型“自凝”で防ぐが、彼が驚いたのは新手だったからではない。
 
切っ先の形に開かれた異界が無数に枝分かれして追尾
全方位型の防御手段を持たぬ相手は“詰み”
防御したとて動けない以上はジリ貧・・・
 
まるでこれは
“執拗に殺しつくす”
そんな殺意の具現とでもいうべき術
 
こんな術は祖父らしくない
そう思ったが、ここで兵馬は思い出していた。
 
以前、唐傘への憎しみから付喪神を容赦なく祓っていた兵馬を
造兵が抱き締めてくれた事があった。
 
憎しみに囚われるな
それは己を蝕む 毒だ・・・
 
抱き締める力とは裏腹に その声は か細いものだった
祖父に憎悪が無いはずがない
 
この術は唐傘を殺す為のものだ
必ずや二人の仇をとってみせるという
決意をもって鍛え上げられたものだ
 
知らなかった そんな一面を見たことがなかった
おじいさんはいつだって
 
兵馬には笑顔で接していたのだ
 
二度と違えない
道を誤ることなど もう あってたまるものか!!
その背中を越えます!!
 
兵馬にも祖父が知り得ない“不意の一手”があった。
防御を解除し、背後に展開した符を起爆して自身を加速。
祖父の攻撃を上回るスピードで距離を詰め、
祖父の周りに張ってあった符を起動。
 
それは我流で再現した生太刀とは別種の奥義
禁術 かつて単身“鬼瓦”を屠った術
 
岐式開門術 封じ手 掃討結界 “空亡”
 
造兵を捉え、大ダメージを与える。
そして、この機会を逃さず、兵馬は 生太刀・千引を放つ。
 
消えゆく造兵
 
・・・俺は逃れられなかった
唐傘は必要とあらば 鼓吹や隼人の体を使い
醜悪な様を見せつけてくる
 
とうに鎮めたはずの どす黒い感情が噴き出して
冷静さを欠いちまった それが敗因だ
兵馬 お前は 強く在ってくれ
 
消える寸前に己を取り戻した造兵の目は優しかった。
成長し、自分を越えた孫へのメッセージは、確かに伝わった。
 
「はい」と答える兵馬を頼もしく感じたでしょう。
これで何の心配も無く消えることができる。
さらば造兵。 強き塞眼よ。