漫画好きのひとり言

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小林さんちのメイドラゴン (クール教信者) 109話

水の中で産まれたエルマ。
自分も水なのだと思っていたが、すぐに自分には輪郭があると知った。
近くに同じ輪郭を持つ者が言った。
あなたはエルマなのだと。
 
調和勢の神和派で、その中で生きていく事が決まっていた
自分の輪郭が またひとつはっきりとして 水を羨んだ
 
いよいよ挙式当日。
テルネは可愛い服を用意したと言ってくれた。
そして「怒っておるんじゃろうな・・・」と言われた。
 
怒っている?
なぜ そう思うのです?
 
だって おぬし・・・
睨んでおるし・・・
 
睨んでいる?
・・・私が? そうですか・・・
 
大丈夫です おばあ様
私はおばあ様の想いはわかっておりますので
 
私の輪郭・・・
調和勢としての自分・・・
これが私をはっきりさせている
 
ならば 私も この立ち位置と居場所こそを
大切にせねばなるまい
 
おばあ様の仲間を想う気持ちを担ってこその私なのだ!
ならば そのように振る舞おう!
仲間に規範を示す私・・・
おばあ様の子としての私・・・
 
お前・・・
一生そうしてるつもりか?
 
突然、声が聞こえたような気がした。
懸命に型に嵌まろうとしている自分に、誰かが問いかけてきた。
自由になりたい自分? それとも・・・
 
屠龍派は人柱が好きだ。
人柱と言っても肉まで喰らう必要はなく、
自然と湧き上がる魔力を少し捧げてくれれば良いのだ。
 
エルマが結びを成せば その主張も通るとテルネは言う。
そうすれば人はもっと調和勢を認めてくれる・・・
自分の輪郭がはっきりしていく・・
 
以前、エルマは相談されたことがあった。
 
人柱によって 人間に嫌われるのはしょうがないことだ
彼らがもたらす魔力を蓄えることで混沌勢を上回ることが出来る
願いの多寡によっては肉を喰らおうとする一部の者もいるが
それもまた仕方なきことなのだ
しかし このままでは調和勢の印象は悪くなるばかり・・・
 
ならば 私が人間を救う行客として世界を回りましょう
 
おお・・・ そこまでしてくれるか!
さすがはテルネ様の一族だ・・・!
 
私はこうあるべき
こうやって私が私になっていく
輪郭が固まっていく・・・
 
干上がった土地に水を湧かせ、人間に感謝された。
お礼としてパンというモノを頂いた。
魔力だけを摂ってきたので、食物をいただくのは初めてだった。
 
それはとても美味しかった
人間は こんなものを創れるのか
すごい・・・ すごい・・・
 
・・・急に 調和勢のために なんて どうでも・・・
・・・いかん いかん 輪郭がぼやけた・・・
ダメだ ダメだ 私は自分を固めるしかないんだ
水になんてなれないのだから・・・
 
そうして聖海の巫女と呼ばれるようになった。
そんな時に あいつ の噂を聞いた
 
自由に飛び回るドラゴン
自由・・・?
混沌の者として暴れるわけでもなく
調和の者として干渉するわけでもない
 
どうして・・・
そんなのずるい・・・
 
実際に会ってみたら
捉えどころが無くて 自分を固めるものを持とうとしていなくて
受け止めたもので自分をそのまま変えようとしている
水みたいなヤツ・・・
 
思えば そんなアイツを羨んで 憧れていたのかもしれない・・・
だけど もういいんだ 産まれた時からわかっているんだ
私は水になれない・・・ 皆に望まれるまま固まっていくしかないんだ・・・
じゃなきゃ 私は私を保てないから・・・
 
式場に入った。
兄姉達が迎えてくれた。
そしてジダもいた。
 
ジダは紳士なフリをしているが、
頭の中では「調和勢制覇の始まりだ
めちゃくちゃ利用し尽くしてしまうと思うが
よろしくな エルマ様・・・」と酷い事を考えていた。
 
このままエルマは屠龍派に利用されてしまうのか?
 
式はとんとん拍子に進んでいく
気がつけば誓いの儀式
 
誓いの口づけをして紋を刻んで下さい と神父に言われた。
 
いいんだ
私はこれでいいと納得している
好きじゃなくたって どうにかなるさ
あいつじゃなくたって・・・
 
そんな時、何かの匂いがした
嗅いだことのある匂いだ
 
これは・・・ あいつが気まぐれで私に作ってきてくれた弁当の・・・
 
思い出したら腹の音がなった
それは それは大きな音だ
 
思い出した
あいつと喧嘩してから・・・ 私・・・ 何も食べていない
 
イヤだ・・・
イヤだぁ!!
私・・・ 帰りたい!!
 
おばあ様が驚いた顔をして、こちらを見ている。
 
イヤだ イヤだ イヤだ!
お腹が減ったんだ!
私は あそこで 食いたいんだぁ!!
 
式が進まず苛立つジダ。
今さら何を言うんだ!
イヤだと言うなら さっさと終わらせよう
 
慌てて紋を刻もうとするジダだが、エルマは激しく拒む。
やめろぉ!
お前なんて 胡散臭くて嫌だぁ!!
 
でもお腹が空いて力が出ない。
このままでは強引に刻まれてしまう。
 
私は馬鹿だ!!
こんなにお腹が空くまで気付かなかった!
美味しいモノだけじゃない!
自分の輪郭がどんなにぼけても構わない!
私は ただ・・・ ただ・・・ あそこに居たかったんだっ!!
 
トール!!
 
親友の痛切な叫びを聞いて、ジッとしていられるわけが無い。
教会のステンドグラスを蹴破ってトール参上!
 
まったく・・・
あなた・・・ 私を呼ぶ声より 腹の音の方がでかいですよ