漫画好きのひとり言

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ましろのおと (羅川真里茂) Track.112

だば うちの父っちゃ 神木流絃ど会ってみね?
総一からの提案に、戸惑いを隠せない若菜。
 
しかし勉強するために戻ってきたのだ。
むしろ神木流絃に会うのは有難いと言える。
 
だども 何をどうしたいのが まだ分がってねぇし
 
何が分からないのかも分からない。
それなら分かるところまで戻らなくてはいけない。
総一にそんなような事を言われ、「戻る」という言葉が頭に残った。
 
俺は どうありたいのが?
どうあるべきか?
 
幼い頃、雪が三味線を弾きたいと言い出した時の事を思い出した。
祖父が使わなくなった三味線を、雪が使いやすいように整え、
そして弾けるように教えた。
 
雪の小さい手では祖父のように弾けなかった。
雪が嫌がったが、若菜も祖父のようには弾けない。
 
俺も弾げねよ だはんで 俺と一緒に弾くべ
 
若菜ちゃんと?
 
んだ
 
若菜ちゃんと一緒だば じっちゃみてに三味線上手になるべな
 
これが原点か。
そして若菜は神木流絃の目の前へ。
 
我の事 嫌いだべ?
そいでも来たどいう事は 相当もがいでるって事だべ?
で 何にもがいでる?
 
雪に先を越されました
 
それは「春暁」のこと。
若菜は「春暁」をどう弾くかという形さえない。
何も浮かばない。
 
それを伝えると、神木流絃は頭をかいて話し始めた。
上手ぐやってるど思ってだのに
お前まで松吾郎さんの呪いさ かがってだが
 
神木流絃は弟子として付いてこいと言う。そして
お前は暫ぐ三味線弾ぐな と言う。
 
今は三味線から離れた方が良いという判断でしょうね。
ゼロに戻るというのは、これくらい荒療治の方が良いのだろう。
 
若菜に兄をやめると言われ、ショックが隠せない雪。
ずっとやる気が出ない。
それこそ三味線を弾けないというレベルではない。
 
ダメだ 堕ぢる!!
若菜ちゃん 早ぐ 来てくれ!!
 
そんな雪の心の悲鳴が聞こえた訳ではないでしょうけど、
桜が笑顔で「ラムネ飲みましょ」とやって来た。
夏休み最後の日との事で、店の手伝いも休み。
 
それを聞いて、雪は桜に ある場所に行くのを付き合って貰う事に。
それは雪の出発点。
 
三味線を弾く気になれない雪は
自ら原点に戻ろうとしているようだ。
 
自分が住んでいたアパートに向かう途中、
川辺の遊歩道で足を止めた。
 
太棹を弾きたい気持ちを抑えられなかった場所
想いが滾った場所
俺の音の「解放」は こごから始まった
 
雪は此処で弾きたくなった。
桜も「聴きたい」と言う。
 
さて何を弾こうか
今の空気にあった曲調・・・
気持ぢコ 軽ぐなってきた
 
わ 速っ 跳ねてる 楽しい
楽しい!!
 
聴いている桜はもちろん、弾いている雪も楽しそうだ。
今の気分さ合った 軽やかで小気味良い 秋田荷方節
 
弾き終わると、見知らぬ男性から声を掛けられた。
此処で弾いていた頃の雪を覚えていた人だった。
若菜で三味線に興味を持ち、たまに雪の事を思い出していたらしい。
 
上手いんだからプロになるといいよ!
頑張ってね
 
既にプロである雪に・・・ でも悪気はないですからね。
雪は不快になるどころか、大笑いした。
世間ってこんなもんだ
自分の世界さ ひきこもりすぎだ!!
 
雪はユナの「私 雪君の音 好きよ」という言葉を思い出していた。
きっとこれからも 堕ちては這い上がる為に スタートに戻るんだ
 
桜が「持って来たおにぎり食べませんか」と言ってきた。
暑い夏の日 河原の芝生に寝そべり 桜を見た。
何かが降ってきた
反射的に桜の手を掴んでいた。
驚く桜に「起き上がるのに つい・・・」と誤魔化した。
 
突然、降ってきたのだ 音が
 
神木流絃のもとで弟子修行を始めた若菜は、
コータと「仁太郎」で食事中。
ここで弾いていた時に梅子に連れ去られたのだ。
 
弟子修行はツラくは無いが、それで何か掴めるのか分からない。
しかし、今 雪と同じ舞台に立ったら呑み込まれてしまうのは分かる。
 
一曲弾いてくれないかと店長に言われるが、
今は禁止されていると伝えると、コータが
「毎日弾がねば音が鈍るんでねの?」と言う。
 
・・・・どんだべなぁ?
俺は雪みてに 寝食忘れでまで弾いでだわげでねし
 
暗闇の中、何処をどう進めば光ある場所に辿り着くのか・・・
若菜はそんな気分なのでしょうね。
浮上するキッカケは果たして・・・?
 
ちなみに次号休載。