ボールルームへようこそ （竹内友） Heat 61

釘宮が部屋から出ると多々良が待っていた。
釘宮は多々良が来るのを待っていたが、
なかなか来ないので部屋を出たら、
既に多々良も準備は出来ていて、練習室の前で待っていたようだ。

多々良に何してんの？と訊くと、
多々良は練習場のドアが開けられないと言う。

自分レベルの者が彷徨いていい場所ではない。
雑誌に載るレベルの選手がゴロゴロいるのだ。
その・・・　正直なところ　帰りたいくらいで

「帰りたい」と聞いて呆れる釘宮。
岩熊組とか蔵内組が中で踊っているのに
練習を見ないで帰るの？

極端な事を言ってすみませんと謝る多々良。

まあ、軽井沢の時みたいに
何も気付かないままボケーっと過ごされるよりはいいけどさ

確かに、ここ（Bres）は多々良レベルの者が来たくて来られる場所じゃない。
そもそも強化選手や推薦選手の練習施設なのだ。
釘宮は実家が近所だから　よく通ったが。

ここで練習に来た人が釘宮に声を掛けてきた。
「この間　スーパーで会ったよ　国枝先生に！」

ピクッとなる釘宮

なんか寂しがっていたよ
どれだけ会っていないのか知らないけどさ
そう言って練習場に入っていった。

沈黙している釘宮に多々良が声を掛けると、不意に訊かれた。
富士田クンはここの奴らのこと好きかい？

へ・・・！？
は　はい！　いい人たちですし・・・

はは・・・　だよなぁ
俺と違って　ひねくれていないし
ダンスも上手いもんなぁ

俺は負け方が下手だったせいで
どうも苦手だよ
正直　君の事も好きじゃないけど
どういう訳か　いくらかマシだ
アレ（A級戦）は　いい負け方だったのかね

負け方・・・ですか

表情が曇る多々良を見て、「・・・くだらねえ」と呟く釘宮。
・・・あのさあ　富士田クンは
“上手い奴ら程　海外とかに行く理由”知ってる？
価値のある場所ってやつは　風が違うんだってよ

風・・・　ですか

ここが気に入ったなら　また来ていいよ
そう言いながら、多々良の背中を押して練習室に入れる釘宮。
（釘宮は入らなかったが）

練習している選手達を見た多々良。
釘宮の言った意味が少し分ったでしょう。
風が

帰宅する釘宮。
電車の中で国枝先生の事を思い出していた。
2年以上も会っていなかった
Bresと目と鼻の先なのに

子供の頃「欧州に行きたい」と国枝先生と話をしていた。
釘宮も思うところがあるでしょう。

翌朝、多々良も帰宅。
帰る時に蔵内が見送ってくれた。
蔵内に来週も来るが、次は客人ではないので
おもてなしは不要ですと伝える。

もてなしは不要だけど蔵内さんとお話させてもらえたら助かる。
蔵内さんが「不純じゃない」って言ってくれて救われた。

蔵内は喜んで「友達になれる気がします」と伝えると、
多々良は驚いていましたが、友達ゼロの多々良には嬉しい言葉だった。
蔵内も友達は少ないので、共感しあっていました。

電話番号の交換をして嬉しそうですが、
多々良は「この人って　僕なんかが
馴れ馴れしくしたら　駄目な人だろォ」なんて思っています。

でも優しい笑顔につられてしまうのだ。
結局　僕はまた　人に導かれてしまった

蔵内さんの肯定の言葉一つで
開き直ってしまう僕も僕だな

手術を終え、マリサ先生に報告する多々良。
マリサ先生は勝手に仙台に出場して
そのままダンスをやめちゃうのかと思ったなんて言っていますが、
さすがに多々良がそこまでバカじゃ無いと分っているでしょう。

「まさかぁ」　なんて多々良は言っていますが、言葉を続ける。
・・・でも実際には　その判断が許されていない様な
不自由さを感じていました
怪我のおかげで出ずに済んで　正直ほっとしています

あら格好悪い

笑顔でマリサ先生に語る多々良。
Bresに行って良かった。

そして釘宮は国枝先生に会い、欧州旅行に誘う。
しかも船旅。
ゆっくりと様々な事を語るつもりでしょうね。

いよいよ仙台GPが開幕
多々良は出ないが、どんな結果が待っているのでしょうか。