漫画好きのひとり言

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時給三百円の死神 (作画/桐原いづみ 原作/藤まる) 11話

契約期間は残り二ヶ月。
真司は雪希の旅立ちのために全力を尽くすと誓った。
それ以来、死神のバイト代は真司にしか届かなくなった。
 
そして雪希にバイト代が入らなくなった。
そこには深い意味があるように思えた。
神様は真司に雪希を救って欲しいと言っているのだろう。
 
雪希が旅立つ日まで、少しでも沢山の幸せを見つける。
考えうる限りの色々なことをした。
遊んだり、食べたり、悪戯したり・・・
 
でも結局は良いことをするようになっていた。
雪希の時間を止める能力は実に便利。
汚かった場所が一瞬で綺麗になるのだから、
誰もが驚いた。
 
こんなサプライズなら、誰もが嬉しいだろう。
もちろん、ロスタイム中にする事だから、
無かったことになるかもしれない。
 
それでも 少しでも何か残らないだろうかと淡い期待を抱いた
 
真夜中に時間を止め、学校に忍び込んで学校をピカピカにした。
そして時間が止まっている中、屋上から夜景を眺めながらカップ麺を食べた。
このまま時を止めて、二人だけの世界で過ごそうか・・・
 
ふざけあいながら寝転び、夜空を見上げた。
雪希はアカシックレコード透明の本の話をしてくれた。
 
以前、雪希の担当をしていた死神さんが教えてくれたこと。
このロスタイムはいずれ無かった事になるけど
それはなくなるんじゃなくて見えなくなるだけ
アカシックレコードの中にある透明な本に残り続ける
 
そう言われると心が落ち着く。
生きた証しは世界の何処かに残り続けるんだよ
 
雪希は、こんな話もロスタイムが終われば
真司は忘れてしまうだろうと言う。
 
そんな事は分からない
忘れないかもしれない
真司は雪希に真面目な顔で伝えた。
雪希は「頑固者」と笑うが、嬉しかったのではないだろうか。
 
雪希は行きたいところがあると言う。
それは二ヶ所あった。
まずは雨野の所だ。
 
雨野には夕ちゃんの家族の事を聞くために会っていた。
両親は離婚し、妹の親権は父が持ったとの事。
父親は虐待に加担していなかったし、今は上手くやれているようだ。
 
その事を聞いて、雨野が本当は優しい人なのだと気付く。
そうでなければ、こんな風に調べたりしないだろう。
 
きっとそこに あなたの本心が宿っていると思うんです
死んだ現実を受け入れられず
誰かの不幸を願ってしまう死者もいると思う
 
・・・私は雨野さんがいつか救われることを願っています。
夕ちゃんも きっと それを望んでいるはずです
だから・・・ ありがとうございました
 
真司は気付いた。
雪希は旅立ちに向かって歩き出しているのだと。
 
別れ際に雨野が死者の能力を使って
真司に「すまねぇな」と伝えてきた。
彼も本当は救われたいのだろう。
 
次に向かった場所は病院。
初対面だが、どうしても会っておきたかった。
それは朝月さんの妹・詩織ちゃん。
 
彼女はずっと姉に酷い事をしたと後悔していた。
そんな詩織ちゃんに姉からのプレゼントを渡した。
欲しかったバッグ、いつの間に調べたんだろう・・・
 
お姉さんは詩織ちゃんの事を本当に愛していた
だから きみ自身の幸せのために“死者”の分も強く生きて欲しいんだ
 
帰り道で雪希は朝月さんと最後の日に話をした事を教えてくれた。
遺言で真司の事を頼まれたが、それがあまりに多い。
遺言どれだけあるんだよ!
 
だっていっぱい話したもの
私達の分まで佐倉君に幸せになって貰おうって
二人でいっぱい話した
 
詩織ちゃんの事も頼まれた。
やっぱり妹の事が心残りだって。
それでも旅立つことを選んだ。
 
何もしてあげられなかった
寂しいのに・・・
何も思い出せない世界に行くのは こんなにも・・・
こんなにも寂しいのに・・・
 
涙を流して語る雪希。
旅立つ決意はしたが、本当は怖い。
 
真司は雪希を抱き締め
「おまえのおかげで朝月は旅立てたんだ
ありがとうな」と伝えた。
 
このロスタイムは 本当は全ての人々が幸せになるためにあるのではないか
“死者”はみんな報われない中で小さな幸せを見つけ旅立って行く
それはどこにも残せない儚い記憶だけど
死神である俺達は まだ覚えている
 
その俺達が忘れる前に彼らの生き様を世界中に蒔いていけば・・・
そこにはきっと素晴らしい意味が宿るのではないだろうか
 
たとえ修正されても それまでに幸せを受け取った人が
さらに別の人に幸せを与えてゆけば
それはきっと無限に咲いて広がっていく
幸せの種なんじゃないだろうか
 
そんな小さな幸せがとても大事だということ
時給三百円にすがりつくような どうしようもない人生だからこそ
その尊さに気付けるんじゃないだろうか
 
人々を「幸せ」で満たし さらには社会を 果ては世界を
「幸せ」にすることを理念にしているのだよ
 
出会ったことに雪希が言っていたことだ。
まさにその通りだよ。
答えは既にあったんだ
 
時は流れ、ついに死神のバイトも最終日。
あっと言う間だった
 
明日には全部忘れてしまう。
 
・・・ねぇ 佐倉君
行きたい場所があるの
 
旅立ちの日に
この日を選んでくれて ありがとうな
 
雪希は自宅に真司を招いていた。
真司のバイト最後の日を旅立ちの日に選んだ雪希。
最後に雪希がやりたい事とは・・・
 
次号最終回