漫画好きのひとり言

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憂国のモリアーティ (原案/コナン・ドイル 構成/竹内良輔 漫画/三好輝) #62

果てしなく懺悔を続けるアルバート

何日経ったのか・・・もう数えるのも止めていた。

 

時間は意味を持たず 永劫に回帰する

私の魂はお前と共に――

 

物事は全て在るべき姿である事が最も美しい

アルバートは些細な乱れやほんの少しの歪みが耐えられなかった。

取り分け許容し難いのは この世界の在り方そのものだ

大人達はいつも“神のもとの平等”という在るべき姿を説く しかし――

現実にはそんなもの何処にも見付からない

 

この国は貧富の差が激しく、階級により差別されていた。

自分が高貴な生まれだから、皆は頭を下げ、優しくしてくれる。

周りの者は自分ではなく身分しか見ていないのだ。

 

人は誰しも平等ではないのか

それが在るべき世界、正しい世界の在り方ではないのか

人は身分ではなく 人それ自体に等しく価値があるはず

あるべき姿にないこの国がとても気持ちが悪い

 

手の届く範囲なら自分で直せるのに・・・

僕一人が正しく在ろうとしても 世界は変わらず狂い続ける・・・

こんな世界は間違っている

・・・だけど 僕は救世主なんかじゃない・・・

僕には世界を変えられない

・・・ならばせめて自分の手の届く所だけでも変えていかなければ

 

そうすれば明日は今日より少し良い世界になる きっとなる

 

そう信じて行動してきたアルバート

ある日、パン泥棒と遭遇した。

パンを盗んだものの空腹で倒れた所だった。

 

あまりに可哀想だったのでパンの代金を追い掛けてきた店主に払い、

いつも行く教会に連れて行き、手当して貰った。

これでパン泥棒も心を入れ替えてくれるはず。

 

父に救貧院への寄付の許可を得ようとしたが、そんな所に寄付しても

モリアーティ家の名を上げることにはならないと許可は出なかった。

 

それならせめて自分の出来る範囲の事をしようと、

教会に銀の食器を贈った。

困った時には売って貰えば良い。

 

しかし、この会話をパン泥棒が聞いていて、銀の食器を盗もうとした。

シスターが咎めたが、アルバート彼にあげたのだと言う。

これでパン泥棒が変われるなら・・・

 

彼は二度と悪事を働くことはありません

僕にそう誓ってくれました

 

こうして見逃した。

犯した罪は取り返しが付かない、

けれど人は罪を犯した後に どう生きるかが大事なんだ

彼の明日はきっとより良いものになる

 

しかし、最悪の結末が待っていた。

銀食器を猟銃に変え 仲間と共に銀行を襲撃

客と行員に多数の死傷者が出た

彼もその場で警察によって射殺された

 

アルバートの目の前は真っ暗になった。

自分が手を差し伸べたせいで悲劇が起こってしまった

自分が何もしなければ彼も誰も殺さずに済んだし

罪の無い人々が殺される事もなかった

 

僕が何もしなければ 皆に明日があった

僕は手の届く範囲ですら変える事は出来ない

世界は狂ったままだ

 

間違っているのは自分だったのか。

自分こそ この世界に要らない人間だ

自殺も考えた。 しかし出来なかった。

 

世界を変える知恵も力も無い

自分を消し去る勇気さえも・・・

 

失意のアルバートだったが、教会には顔を出していた。

そしてそこで出会ったのだ。

彼に・・・